【第6回】AI時代の子育てと教育 〜学校でのAI活用、必要な能力、プログラミング教育について〜
- SeedingNEO プログラミング教室
- 5月14日
- 読了時間: 8分
近年、AI技術の発展は目覚ましく、特に利用者の指示に基づいて様々なコンテンツを生み出す「生成AI」が登場したことで、人間が作ったものと見分けがつかないようなコンテンツの生成も可能になってきました。このようなAIの急速な普及は、私たちの社会だけでなく、教育現場にも大きな影響を与え始めています。
AI時代を生きる子どもたちの教育について、疑問や不安を感じている保護者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。この記事では、文部科学省などの資料を基に、学校でのAI活用状況や、これからの時代に子どもたちが身につけるべき能力、そして家庭でできる取り組みの一つであるプログラミング教育について、分かりやすくご紹介します。
学校ではAIがどのように活用されているの?
文部科学省は、生成AIの教育現場での適切な利活用を目指し、様々な取り組みを進めています。その一つとして、「リーディングDXスクール」という事業で、一部の学校がAI活用に関する先行的な取り組みを行っています。
学校でのAI活用には、主に「教育活動」と「校務」の二つの側面があります。
1. 教育活動での活用
生成AIは、子どもたちの学習活動においても様々な活用が考えられています。例えば、以下のような利用例が挙げられます。
•情報モラル教育の教材として
生成AIが生成する誤りを含む出力を教材として使用し、AIの性質や限界に気づく機会とする。
•思考を深めるツールとして
グループで話し合ったアイデアをまとめる途中段階でAIを活用し、足りない視点を見つけたり議論を深めたりする。
•個別学習のサポートとして
英会話の相手として活用したり、興味関心に応じた単語リストや例文を作成したりする。
ただし、これらの活用にあたっては、生成AIのメリット・デメリット、AIには自我や人格がないこと、そして生成AIに全てを委ねるのではなく、最終的に人間が判断し、責任を持つことが非常に重要であるとされています。子どもたちの発達段階や、学習活動の目的に照らして適切に判断する必要があります。
2. 校務での活用
先生たちの働き方改革を進めるためにも、AIやICT(情報通信技術)の活用が期待されています。例えば、以下のような校務での活用事例が報告されています。
•アンケート結果の要約
運動会や授業参観などのアンケートの自由記述欄をAIで要約し、傾向分析のたたき台を作成することで、業務が効率化された。
•各種文書の作成支援
校内研修の構成案や、学校行事の実施要項、挨拶文などのたたき台をAIに作成してもらうことで、一から考える時間が削減された。
•教材作成の効率化
授業で使用する資料や問題のたたき台をAIに作成してもらうことで、準備にかかる時間が短縮された。
また、クラウドサービスを活用して、保護者からの書類提出をWebフォームで行ったり、個人面談の日程調整を効率化したりといった取り組みも進んでいます。さらに、教員間で作成した教材をクラウド上で共有することで、教材作成の効率化や質の向上につながった事例も報告されています。これらの取り組みは、先生方の業務負担を軽減し、より子どもたちと向き合う時間を増やすことにつながると期待されています。
AI時代に子どもたちが身につけるべき能力とは?
AIが様々な作業を効率化できるようになる中で、これからの時代を生きる子どもたちにはどのような能力が必要になるのでしょうか。文部科学省は、現在の学習指導要領でも目指している、生きて働く「知識及び技能」、未知の状況にも対応できる「思考力、判断力、表現力等」、そして学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力、人間性等」といった資質・能力が、AI時代においても引き続き重要であるとしています。
特に、情報活用能力の育成を一層充実させることが必要だと考えられています。これは単にデジタル機器を操作できるということだけでなく、生成AIが社会で果たす役割や影響、関連する法制度やマナーを理解し、問題を解決するためにAIを適切かつ効果的に活用する態度を身につけることを含みます。
また、AI時代には、リベラルアーツ(人文科学、社会科学、自然科学などを幅広く学ぶ教養)が培う能力、例えば、批判的思考力、創造性、コミュニケーション能力、異文化理解力などがますます重要になると言われています。哲学を学ぶことで論理的思考力や倫理観が、文学を通じて表現力や人間理解が深まるなど、リベラルアーツは知識だけでなく、柔軟な思考力を育む源泉となるのです。
なぜプログラミング教育が重要?家庭でできることは?
学校では、情報活用能力の育成の一環としてプログラミング教育が行われています。プログラミング教育は、単にコードを書く技術を学ぶだけでなく、論理的に考え、問題を解決する力や創造性を育む上で有効です。
特に、小学生低学年からのプログラミング学習が推奨されるという意見もあります。これは、子どもの発達心理において、「9歳の壁」や「10歳の壁」と呼ばれる時期以降、新しいことや苦手なことへの挑戦を恐れる傾向が出てくるため、その前にプログラミングに触れておくことが推奨されるという考えに基づいています。
家庭でプログラミング学習を始める方法としては、Scratch(スクラッチ)やMicro:bit(マイクロビット)のような、小学校でも使われている教材を活用したり、マインクラフトやキュレオなどのオンライン教材を利用したりする方法があります。また、ロボットや工作と組み合わせて学べるレゴ®ブーストなどの教材も人気です。
もしプログラミング教室を検討するなら、以下の点を考慮して選ぶことが大切です。
•何を学びたいか明確にする
純粋なプログラミング、ゲーム制作、ロボットなど、教室によって学べる内容は様々です。
•リアル教室かオンライン教室か
それぞれのメリット(対面でのコミュニケーション、場所を選ばないなど)を考慮しましょう。
•料金体系を理解する
月謝、入会金、教材費など、かかる費用は教室によって異なります。
•対象学年を確認する
子どもの学年に合ったコースがあるか確認しましょう。
•子どもの性格と教え方の相性
試行錯誤を重視する教室もあれば、手厚いサポートがある教室もあります。体験授業などで確認しましょう。
•教室の雰囲気(校風)
子どもが楽しく学べる雰囲気かどうかも大切です。
•体験授業に参加する
多くの教室で体験授業が実施されており、実際の授業の雰囲気や子どもが楽しめるかを確認する良い機会です。
AI活用に伴うリスクと対策
AIの教育現場での活用には、リスクも伴います。例えば、生成AIが出力する情報には誤りや偏見が含まれる可能性があり、偽情報が増加するという指摘もあります。また、既存の著作物との類似性や、海賊版等の利用に関する著作権の問題、児童生徒の個人情報・プライバシーの保護なども重要な留意点です。
文部科学省のガイドラインでは、これらのリスクを踏まえ、安全性、情報セキュリティの確保、個人情報・プライバシーや著作権の保護、公平性、透明性の確保、そして関係者への説明責任を果たすことが共通のポイントとして挙げられています。学校現場でのAI利用に関する著作権については、教材利用や情報解析などの場面に応じた考慮が必要となります。
海外の事例を見ても、AI活用にはプライバシーの侵害やデータの不正利用のリスクが懸念されており、明確なルール設定やシステムの透明性確保が必要であるとされています。
また、AIが教育的判断に関わるようになることで、教育における人間関係や判断基準が根本から変わる可能性や、人間の自律性が低下する可能性を指摘する倫理的な課題もあります。こうした課題に対し、人間による制御が重要であるという原則が示されています。
AIが子どもや若者に与えうる心理的・認知的な影響に関する研究も奨励されており、子どもたち自身をAIに関する対話や意思決定に有意義に関与させる仕組みも必要であると考えられています。
まとめ
AIは、適切に活用すれば、教育活動や校務の効率化、そして子ども一人ひとりの才能を開花させるための強力なツールとなり得ます。しかし同時に、AIの性質やリスクを理解し、人間が主体となって賢く利用していく姿勢が不可欠です。
AI時代の子育てにおいては、学校での取り組みだけでなく、家庭でもAIや情報技術に関心を持ち、子どもたちが必要な能力を身につけられるようサポートしていくことが重要です。特に、論理的思考力や創造性を育むプログラミング学習や、幅広い教養を身につけるリベラルアーツの考え方は、これからの時代を生きる子どもたちの力となるでしょう。
AIと共に進化する教育の未来に向けて、学校と家庭が連携し、子どもたちが変化の激しい時代をたくましく生き抜く力を育んでいきましょう。
次回は【第7回】
参照資料
文部科学省「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン」 / https://www.mext.go.jp/content/20241226-mxt_shuukyo02-000030823_001.pdf / 令和6年 12 月 26 日
文部科学省「校務DXを促進するための取組に関する参考資料」 / https://www.mext.go.jp/content/20241225-mxt_jogai01-000033278_06.pdf / 令和6年 12 月 26 日